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 れは4ゲーム目に始まった.

ちょっと画像がきたないが李源學バズーカのgifアニメーション。中堀・高川戦より。クリックすると動画ページに。
 男子国別対抗戦日本対韓国戦の初戦,中堀高川組と,李源學劉永東組の第4ゲームは,韓国ペアのサーブだった. ベースライン・プレーヤーである李源學がミドルに近づき,二回,三回とラケットでボールを地面にバウンドさせた.
「やるぞ!」
 誰かが小声でささやいた.しかし日本ペアは全く気がついていない.李源學が放ったサーブは,韓国製ボール特有の大きな音とともに高川の脇をすり抜け,ベースライン遙か後方のフェンスに突き刺さっていた.

 それは,今大会で最も衝撃的な事実の始まりであった.

 日本人観戦者の間では,「スーパー・サーブ」あるいは「バズーカ・サーブ」などと呼ばれた超高速サーブを,ようやく韓国選手が国際大会で披露したのだ.ソフトテニスの漫画があれば,間違いなく「キャノン・サーブ」などと呼ばれそうなサーブだ.

金煕洙のバズーカ。これは個人戦から。こういう画像をみると「リバース回転をかけている」と言う勉強不足のひとが必ずいるが、そうではない。前腕を回内させてパワーをひきだしてるのだ。サービスの基本中の基本である。

 僕がそのサーブの存在を知ったのは,2年ほど前のことだった.韓国国内では,とてつもなく速いサーブが使われていると聞いていたのだが,例えば中堀のサーブよりも速いサーブというようなものがイメージできなかったのだ.

 今大会,この高速サーブを使ったのは, 李源學金煕洙だった. 二人とも,同じような特徴を持っていた.
 まずポジションをミドルに取り,地面にボールを何度かついてから始まる.
中堀のサーブ。韓国戦より。むろん素晴らしい。
 サーブのモーションは,クイックであった.グリップはコンチネンタルか,イースタンであろう. 体幹部を大きくそらせてゆったり打球するというよりは,クイック・モーションのフラットで打球していた. フラットで打球されたボールは,途中大きくストンと落下,あるいは,やや微妙にスライドし,あとはレシーバーの脇を素早くすり抜けていくだけだった. すり抜けたボールは時折,コートの遙か後方にあるフェンスの,上方約1.5mあたりから張られていたネットに突き刺さるほどであった.

 この第4ゲーム,李源學は4本中3本の高速サーブを決めてきた.2回目のサービス・エースをくらった中堀はそのまま日本ベンチを振り向き,「どうしようもないよ」といったジェスチャーを送っていた.正に為すすべがなかった. 

 ところで,この韓国製の高速サーブは,日本のソフトテニス界では全く考えられていなかったのではないだろうか. 日本人にとって「好ましいサーブ」は,中堀を典型としてみられるであろう. 膝を深く曲げ,ゆったりとした体幹部のしなりを作り,それを起点として高速サーブが生み出されると考えられてきた.実際にはそれは間違いではない.   --->