---エピローグ---
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 ソフトテニス競技が終了した翌日のメディアは,ソフトテニス韓国チームが完勝したことで湧いていた.そんな中,日の丸の鉢巻きをした日本人の若者が必死に応援する姿がテレビに映し出されていた.
 今日は午後の飛行機で帰国することになっていたので,午前中に競技のメイン会場であったSajikスタジアムに向かった.巨大なスタジアムに入ると,陸上競技が行われており,日本の室伏広治がハンマー投げで圧勝していた.
真ん中の画像のまんなかにたしかに室伏がいる
 青い服を着た女性の一団が広くスペースを陣取っていたが,帰国後彼女たちがいわゆる北朝鮮の喜び組であることを知った.無数の少年少女達の歓声とざわめきに耳が慣れることもなく,僕は陸上競技に興味を失ってしまっていた.帰国するという事実が,熱狂から現実へ帰るという事実が,心に大きくのし掛かっていた.しばらく陸上競技を観戦したら,スタジアムを出る時間になってしまった.

 メインスタジアム近くにあるテニス・コートに行ってみると,昨日までの熱狂が展開されていたコートが,誰の目にも触れることなくひっそりとしていた.コートに降りることもできたが,何故かそれもためらわれてしまった.昨日までの熱狂は過ぎ去り,吹き抜ける風には秋を感じた.

 飛行機の窓から見える釜山の街は,ネオンきらめく大都会の表情そのものだった.そんな光景を見ていると,アジア大会が終わったのだろうかと,少しだけ寂しさを覚えた.

 

 帰国後,しばらくしてから観戦記を書き始めた.しかし,もともと取材を丹念にしたわけでもなく,観戦主体の態度から,今回取り上げた選手達の像をどうやって浮き彫りにできるのだろうかという,大きな問題にブチあたってしまった. それは当然と言える問題で,その問題を起こしたのは自分自身であるのだから,何とか決着をつけたかった.
 そんな時,とある場所で今大会のビデオを見ながら,一杯やろうという話が持ち上がり,喜んで行ってみた.ところが,とある初対面の男性が「韓国選手は天皇杯のベスト8くらいなんでしょ.」と言うのを僕の目の前で聞いた.さらにその方は,「中堀・高川が負けるなんて信じられないし,信じたくないですよ.」とも言っていた.僕達は,今大会最も衝撃的なシーンであった,日本―韓国戦でのバズーカ・サーブのシーンを中心に見ていたから,彼は中堀・高川が完敗したことを見たことになる.何故現実から目をそらそうとするのであろうか.その心情を理解しようにも僕にはできる相談ではなかった.それとともにあまりにショックでもあり,観戦記を書かないわけにはいかないように感じられた.

フィリピンナショナルチームを招待しての焼肉パーティ。A.純氏の尽力なくしては実現不可能だった。
 どこまで伝えることができたか,いささか自信がないスタイルに取り組んでしまって,書き終えるのに予定よりも大幅な時間が掛かってしまった. 少しでも国際大会の醍醐味が伝わっていることを願うばかりだ.
焼肉レストランオーナー朴さん夫妻。界隈では人気のお店。 TBSの技術サポートの為にドイツからきていたテレビクルーも連日訪れていて国際色豊かだった。 われわれもほぼ毎日いった。美味しくて安い。信じられないくらいやすい!! 朴さんは競技自体にも関心をしめしてくれて、最終日には試合をみにこられたほど。

 執筆にあたっては,ソフトテニス・マニアック友の会(現The Art(s) of Soft-Tennis:AST)の方々との議論が欠かせなかった. 僕の疑問に丁寧に答えてくださった会員の方々に感謝したい.それとともに,また一緒に観戦できることができたら,それは本当に楽しいことだろうと思われた.また,宿泊場所であった自然黄土モテル一階にあるレストラン・オーナーのParkさん御一家には,送迎を始め,買い物など大変お世話になった.御礼申し上げる次第である.

 もう既に話題は広島で開催される世界大会に移っている.各国の巻き返しが楽しみでもあるし,参加国数が多いことも楽しみだ.===>