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劉永東 YOU Young-Dong(ユウ・ヨンドン)韓国 史上最強のネットプレーヤー。完璧なテクニックと冴え渡るヘッドワーク、そしてなによりも圧倒的な迫力で万人を魅了する。このような選手は二度あらわれないだろう。国際大会における獲得金メダルは実に9個!!まさに金字塔である。
1994アジア五輪国別対抗銀メダル、ダブルス金メダル。1996アジア選手権国別対抗金メダル、ダブルス銀メダル。1997東アジア五輪国別対抗金メダル、ダブルス金メダル、シングル金メダル。1998アジア五輪国別対抗金メダル、ダブルス銅メダル。1999世界選手権国別対抗銀メダル、ダブルス銅メダル。2002アジア五輪国別対抗金メダル、ダブルス金メダル、ミックスダブルス金メダル。2003世界選手権国別対抗銀メダル、ダブルス銀メダル、ミックスダブルス銅メダル、2003年に引退したが2006年電撃的に復帰。
釜山アジア五輪ミックス決勝。
国別対抗韓国vs.台湾での廖南凱。
方同賢・廖南凱vs.李源學・劉永東 アジア五輪国別対抗より

Episode-1

 『尊敬するプレーヤー? それは劉永東さ!』

 今年(2006)の六月一週間にわたり台湾を取材旅行したとき、五人の選手、及びコーチにインタヴュ−することができた。男子ではチェンマイアジア選手権でスーパーダブルフォワードをみせた劉家綸・李佳鴻の二人に時間を割いてもらう。場所は台中市の中心に位置する台湾体育学院前の喫茶店。この言葉はそんなかででた。
 -----尊敬する選手、目標とする選手は誰ですか-----、という質問に対するこたえである。

----- それは台湾選手のなかでってこと?(劉家綸) 
----- いやボーダレスということで.....(筆者)
-----<間髪をいれず> じゃ、劉永東さ(劉家綸) 
----- 僕もそうです(李佳鴻) -----

 なぜか非常に唐突な印象があった。よく考えてみればあたりまえか、納得するのだが、そのときは全く予期していない返答だったのだ。もっとも二人が異口同音にそういったのはやはり驚くべきことであろう。何度か国際大会で顔をあわせたことのある劉家綸(直接対戦はない)はともかく、そうではない李佳鴻までも、である。台湾において劉永東は伝説化しつつあるということか。

 この時点で劉永東の復帰はだれも知らなかった・・・・・・・

Episode-2

----- とても大きくて恐かった。どこに打ってもとられてしまった -----

 

 2002年のアジア競技大会(釜山)ミックスダブルス決勝で劉永東と対戦した周秋萍の証言。彼女は同大会で他の男子前衛からそういった印象をうけることはなかったという。釜山でのヨンドンのミックスは予選リーグにおいてその凄さが空回りした感があったが、次第に落ち着き、特に準決勝、決勝は完璧。今年は金環連とのペアでエントリーしているが中堀・上嶋との対決が今から楽しみである。(右画像はミックスダブルス決勝後の劉永東・金瑞(手前) 周秋萍・方同賢)

Episode-3 

----- ライバル?もちろん劉永東さ ----- 

 と言い切るのは1990年から2002年までアジア競技大会四大会連続出場を果たしたかの廖南凱。この二人が最後に対戦したのは釜山アジア五輪。国別対抗団体戦のトップと個人戦ダブルス予選リーグでの二試合。個人戦ではお互い予選突破を決めたあとの試合であり、がちんこ、というわけでなかったが、決勝トーナメントでの再戦(結局は実現しなかったが)をにらんで独特の緊張感のあるゲームとなった。ある意味消化試合なのだけど、お互い腹をさぐるような展開から激しいつばぜり合いとなり前半の緊張感は耐え難いほど。やがてどちらかなともなく力を抜き、静かに刀を鞘におさめるという風に終了。釜山アジア五輪のベストゲーム候補の一戦である。消化試合がこのように感じられるのはたいへんなことである。ヨンドンのバズーカスマッシュのフォローに跳躍するナンカイの姿はまるでヨーダのそれであり、コンピュータグラフィックスでつくられたかのごとくの非現実感さえただよった。そういえば、小柄のナンカイと長身のヨンドンの戦いはヨーダとパルパティーンの戦いを彷佛とさせる。怪我と韓国ボールに苦しんだナンカイだったが、だからこそ、彼の、ある意味ベストパフォーマンスであったかもしれない。(これはNankai SAGAになってしまった)

Episode-4

 とあるパーティの席上(日本)、何度か代表にもなった超有名なあるプレーヤーがヨンドン(劉永東)の前に直立不動で立っている。なにをしているのか、とみていたらなんとサインをもらっていた!
 僕はこのシーンが忘れられない。そして、ほおを紅くし、緊張の面持ちで、ヨンドンの前に立つその選手もすっかり好きになってしまったのである。

Episode-5

これは伝聞エピソード 

〜 90年代後半、日本のある大会に招待された劉永東。スマッシュ練習時、すさまじいパワーでボールを叩き割った。韓国ボールではない。日本のボールである。メーカー担当者も記憶にない、とあぜん 〜

Episode-6

1997年釜山で行なわれた東アジア競技大会ではダブルス、シングルス、団体戦の三種目に優勝し、三冠王。2002年にやはり釜山でおこなわれたアジア競技大会にはダブルス、ミックスダブルス、団体戦の三種目に優勝と、韓国国内でおこなわれた国際大会では出場した種目全部に優勝と格別な強さをみせる(但し全勝ではない。1997東アジア競技大会シングルス予選で謝順風に一度敗れている)。ヨンドンといえば韓国人はだれでも知っている、というわけにはさすがにいかないが、アジア五輪等の活躍は新聞でも破格の大きな扱いだったし、テレビのバラエティ番組にも出演経験があり、自国を代表するアスリートしてまずまず正当な扱いをうけているといえるのではないか。

 

 12月にカタールド−ハで開催されるアジア五輪男子は台湾に挑む日本、韓国という構図になるはずだった、が、劉永東の復帰で様相は一変した!

 優勝候補は韓国、いや劉永東、である!!

 

一応ことわっておくと当サイト『ヴィルトゥオーゾ』で紹介するプレーはすべて神技である。あえて劉永東に神技のサブタイトルをつけたのは拙文「劉永東は神になるか?」にかけてのことである。

 1999世界選手権(台湾 林口)での劉永東(ユウ・ヨンドン-韓国)。この大会におけるヨンドンの素晴らしさについては以前に書いた。

 これはゲーム中、ヨンドン自身のサービスリターンからの中陣でのファーストボレーである。 上の分解写真1の完璧な美しさをみてほしい。これ以上のものはどこを探してもない、といえる中陣での『構え』である。まさに 神の御技!!

 

 柔らかく曲げられた両膝。リラックスした上体で起こされた上体。高く自然な形であげられたラケット(面がクローズしていない)。もちろんきっちり左手のサポートがある。最低限やらなければいけないことを実行しているだけなのだが、これがなかなかできていない選手がおおいのだ。

最近、特に目立つのが(何度も書くが)この左手によるサポートの軽視である。構えた時に左手を添えない形で構える前衛のなんとおおいことか!!あの格好の悪さ、いや気味の悪さは目をそむけたくなるほどであるが、最近ますますふえつつあるようだ。どういうことなのか!なんたる美意識の欠如!いや、それよりもなによりも基本を踏みにじっているところがほとんど許し?難い。

 
劉永東のボレーグリップ。手のひら全体でおおきく握ったセミウエスタン。

 左手は、構えた時だけではなく、テイクバック完了まで重要な役割を果たしている。別に韓国流でもヨンドン流でもない。これが基本なのである。こんなこと、本来ならこの『ヴィルトゥオーゾ』でくだくだいうようなことではないのだが・・・

この画像は今年6月に撮影された練習中の劉永東。動画とほぼおなじようなシチュエーションである。右肘のポジションがよくわかる。

 とくにフォーカスしてみてほしいのは肘の位置である。もちろん右肘。
 右肘を『前に前に』、というのは常識だが、実際にそれがどういうことなのかわかってない人はおおい。 どうかするとそうおしえている人も具体的な形を示せなかったする(そういうことが多すぎる!)。つまりわかってない、ということなのだが・・・
 ここでのプレーはまさにそのお手本である。とくに2以降ググッと肘が前にいくところを分析し、実践し、消化してほしい。いやになるぐらい咀嚼すること!!もちろんこの『かたち』がすべて、というわけでは無論、ない。そこのところはどうか誤解のないよう。ただ、ヨンドンはここでのフォームを基本をおいていることは間違いない。

 9からのフォロースルーはとても大きい。これはデプス(深さ)を求めているため。 直接ポイントを狙ったような強烈なパンチではなく、深くつないでいこうという意志がみえる。もっとも弾道はひくくスピードはかなりある。

 毎回そうだが、まだまだ書きたいことはたくさんある。 全体を通してラケットが決してさがらないこと。目線を球筋にあわせてできるだけさげようとし、決してヘッドアップしていないこと、 そしてなによりも特筆すべきなのは、この不思議なフットワークである。 捻りをいれない身体のさばきかたである。これは逆足ではない。これが韓国では基本なのである。(by TOSHI)

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